夏季企画展「新発見!ひょうご発掘調査速報2023」に関連して、7月29日(土)に発掘調査速報会が開催されました。
考古博物館と発掘調査を行っている、公益財団法人兵庫県まちづくり技術センター埋蔵文化財調査部との共催事業です。
今回は、令和4年度に兵庫県内で実施した、荒目遺跡(南あわじ市)、津門大塚町遺跡(西宮市)、三月野古墳群(養父市)の3カ所の発掘調査について、まちづくり技術センター職員による最新の調査成果の報告です。
会場に詰めかけた皆さんの熱気で速報会への期待も高まります。
まちづくり技術センターの竹森常務理事からのあいさつで速報会が始まりました。
調査成果報告のトップバッターは、埋蔵文化財調査部調査第2課の三好元樹さんです。南あわじ市の荒目(あらめ)遺跡「淡路島南部の弥生集落」について報告してくださいました。
荒目遺跡は、淡路島南部の三原平野の北東部に位置します。
三原平野東北部には縄文時代以降の遺跡がみられますが、特に遺跡が増加するのは弥生時代中期後葉以降です。三原平野の北東に位置する洲本平野と近接する立地から、古代には都と四国地方を結ぶ南海道が通り、国分寺・国分尼寺が建てられるなど、淡路島の中心地であったと考えられています。
調査の結果、古墳時代中期~後期の集落および埋没古墳群が見つかっています。
今回の速報会では両者の関係から推測できる当遺跡の性格についての報告がありました。
今回の見つかった集落では精錬鍛治も含めた大規模な鉄器生産が行われていた可能性が高く、西摂地域の中核的な生産遺跡の一つであったと考えられます。
また、集落と同時期の埋没古墳群が見つかっていますが、この古墳群に葬られた人々は集落で各種生産に従事する人々を統率する立場にあったと推測されています。
最後は、整理保存課の稲本悠一さんから養父市の三月野(みつきの)古墳群「但馬の横穴式石室を掘る」についての報告です。
三月野古墳群は円山川東岸の丘陵尾根上に立地する、11基の古墳からなる古墳群です。これまで旧養父町教育委員会によって1・9~11号墳が調査されており、11号墳からは、臼玉などの装身具や馬具の飾り金具が出土しています。
今回は3号墳の調査を行いました。
三月野3号墳は、出土した遺物や石室の構造から、古墳時代後期(6世紀後半)のものであることが明らかになりました。
古墳の規模、出土した遺物から、埋葬された人物は、王権の直接支配を受けた有力家長(民衆の上層)の可能性が高く、その家族も追葬されたと考えられます。
今回の調査結果は、養父市、但馬地域における古墳時代の地域社会や埋葬施設の様相、埋葬方法を考える上で、貴重な発見となりました。
以上3名の方々からの報告がありました。
その後、休憩を挟んで、考古博物館の和田晴吾館長をコーディネーターとして、客席も交えた討論会がありました。
終了予定の16時まで活発な討論の後、閉会となりました。
さらに、予定外ではありましたが、特別展示室において、各遺跡の調査員による展示品を前にした解説会を行いました。考古学を専門にしている学生さんたちも多く、閉館時間間際まで質問が続いていました。