みなさんも一度は「お茶碗はちゃんと手に持って食べなさい!」と怒られたことがありますよね。ところが、お隣の韓国や中国では器を手に持って食べる習慣はありません。 それでは、日本のこうした習慣はいつごろはじまったのでしょうか? 弥生時代の子供たちも同じように怒られたのでしょうか? ときのギャラリー 考古学では、遺跡から出土した物を観察し、そこから昔のさまざまな情報を引き出します。今回は、当館の東エントランスにある「ときのギャラリー」に並ぶ「器(うつわ)」の変化を見てみましょう。 須恵器「坏」 奈良時代には写真のような器が使われていました。「坏(つき)」と呼んでいます。底径が大きく、手で持つには不都合な形をしていることから、器は手に持たず、お膳の上や床に置いたままで食事をしたようです。 須恵器「椀」 平安時代の中頃の写真の器を見てみましょう。奈良時代のものと比べて、ずいぶんと底径が小さく、側面も丸みをもち、今のお茶碗とよく似た形をしています。 このような形の器、「椀(わん)」は置いて食べるには少々不安定な形で、手に持つとなじむような形をしていることから、この頃には、器を手に持って食事をするようになったようです。 器の形の変化から、食事方法の変化を推測してみました。どうやら、奈良時代より昔の弥生時代の子供たちは、「お茶碗はちゃんと手に持って食べなさい!」とは怒られなかったようですね。 (学芸課 中村 弘)
弥生の村、史跡大中遺跡に隣接したフィールドミュージアムです。