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5月 22, 2022の投稿を表示しています

令和3年度末の刊行物-研究紀要と発掘調査報告書-

   毎年3月末に刊行している研究紀要と発掘調査報告書を紹介します。     研究紀要第15号 全6編、87ページ    研究紀要第15号です。当館の学芸員のこだわりの研究や大学教授との共同研究などの令和3年度の研究成果を集めています。掲載内容・執筆者は以下のとおりです。    山本 誠(〔公財〕兵庫県まちづくり技術センター埋蔵文化財調査部次長)   「三角縁神獣鏡は語る(1)」  藤田 淳(当館学芸員)   「兵庫県における古墳出土刀剣の把巻と把装具について -二本芯並列コイル状二重構造糸巻きを中心に-」  渡辺 昇(当館名誉学芸員)   「横穴埋葬の終焉 -カヤガ谷1号横穴出土遺物から-」  中川 渉(当館学芸員)   「福知山市夜久野町矢谷経塚出土の東播系須恵器甕とその系譜」  永惠裕和(当館学芸員)   「失われた台場を追え!Part2 -高砂市所在 高砂台場編-」  森本速男(兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授)・山本 誠   「磁気を用いた考古遺跡内の岩石・土壌の被熱履歴検出と被熱温度推定」 ※  研究紀要は、当館のミュージアムショップにて1冊税込み1,100円でお買い求めいただくことができます。 *  *  *  *  *  続いて、令和3年度の遺跡の発掘調査報告書を紹介します。  令和3年度は5冊刊行しました。左から2番目の鍛冶田遺跡の報告書は、厚さが4㎝以上もあります。 兵庫県文化財調査報告書 第518冊 西脇市「津万遺跡群4」 【175号西脇北バイパス事業に係る埋蔵文化財発掘調査報告書】  津万遺跡群は、加古川西岸の平野部に位置し、加古川が形成した沖積低地に立地しています。この「津万遺跡群4」では、津万3区から8区までの調査結果を掲載しています。調査では弥生時代後期から古墳時代前期の竪穴住居址・大溝、中世前期の掘立柱建物址・墓址・井戸・水田遺構・粘土採掘坑を検出し、遺物では縄文土器・弥生時代後期末から古墳時代前期の土器、8~9世紀の須恵器杯類・転用硯、中世の土師器皿椀鍋類などが出土しました。 兵庫県文化財調査報告書 第519冊 揖保郡太子町「鍛冶田遺跡」 【(主)太子御津線社会資本整備総合交付金事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書】  鍛冶田遺跡は、揖保川本流の東、2.2km付近の微高地上に立地し、数万㎡にわたる領域を占め、縄文時代晩期から鎌

講演会「大中遺跡の竪穴住居を探る」

5月14日(土)、春季特別展関連講演会の第2弾「大中遺跡の竪穴住居を探る」を開催しました。 講師は兵庫県企画部地域振興課・兵庫津(ひょうごのつ)展示班長の多賀茂治氏。今秋に開館する県立兵庫津ミュージアム「ひょうごはじまり館」の立ち上げにお忙しいなかお越しくださいました。 このブログを読んでくださっている方の中にはご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は多賀さんは、当館の開館準備メンバーで、前回ご紹介した「大中遺跡調査研究・活用プロジェクト」のメンバーでもあります。 今回の講演会では、大中遺跡のバリエーションに富んだ竪穴住居跡を読み解き、弥生時代の人々の暮らしや社会についてお話しいただきました。 はじめに、竪穴住居の構造の特徴と、形の移り変わりについて解説がありました。 大中遺跡の一番の特徴は、いろんな平面形、いろんな構造の竪穴住居跡がたくさん発掘されたことです。大中遺跡が発見された60年前は竪穴住居跡が1つ見つかっただけで大発見だったので、多数の住居出土のニュースは衝撃的だったでしょう。 そもそもなぜ「竪穴住居」と言うかというと、地面に大きな穴を掘るから竪穴住居といいます。屋根材や柱の木材は朽ちてなくなってしまうのに、なぜ骨組みがわかるかというと、柱穴の位置や、火事で焼け残って炭化した木材などから推測できるからです。 竪穴住居を読み解くにはどこを見ればよいか?というと、次の5点を挙げられました。  ①大きさ(床面積)   ②平面形の形状(丸、四角、多角形、長方形など)、柱の数(何本なのか)。  ③柱と柱の距離(主柱間距離)  ④炉の場所(火をおこす、燃焼施設の場所)  ⑤周囲に高床部がついているか、中を区切るもの、空間をわける段や溝はあるか。 ①~⑤を見比べることで、どの頃の建物なのか、時代の移り変わりがわかります。 基本的には、以下のように変化するとのことです。  ①=最初は大小あるが、均一化されていく。   大中遺跡の最盛期の建物はだいたい30~40㎡。  ②=円形から方形になる。(多角形はその過渡期に現れた特異な形)  ③=弥生時代の技術では柱間は3.5m程度が限界。  ④=燃焼施設の位置が中央から住居の端へ移動。  ⑤=床の段がなくなり、フラットになる。 つまり、③の主柱間の制限により家を大きくするためには柱の数を増やす必要があり、多角形の家が出てきた

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