9月18日に、兵庫考古学研究最前線2021「古墳時代の兵庫」の第4回目『兵庫の大型横穴式石室』を開催しました。
講師は櫃本 誠一 当館名誉学芸員。
兵庫県文化財担当職員のOBで、兵庫考古学の初期を牽引してこられたお一人です。
今回のご講演は、古墳時代後期の埋葬施設である横穴式石室に関するもので、県指定史跡の文堂古墳(香美町)をはじめとして、当県に所在する様々な形態をした横穴式石室の解説と、その大きさ、変遷、地域性などに関する研究成果をお話いただきました。
文堂古墳の出土品は、櫃本先生がいらっしゃった大学が、2006年に調査し、2014年に報告書が刊行されたもので、特に念入りに詳しくお話いただきました。現在これらの出土品は県指定文化財となっています。
文堂古墳は兵庫県の北部、香美町に所在し、金色に輝く金銅装の大刀(頭椎大刀:かぶつちのたち、双龍環頭大刀:そうりゅうかんとうたち、圭頭大刀:けいとうたち、銀装大刀など)や馬具といった多くの豪華な副葬品が出土したことで知られています。その石室は畿内と但馬地域のそれぞれから影響を受けたものと考えられるそうです。
そして、大刀や馬具、石室に表現された被葬者の階層についても触れられ、但馬には在地の階層性と畿内政権を中心とした階層性の二重構造が存在したとする説があることを紹介されました。
さらに、前方後円墳の終わりと横穴式石室のはじまりには重なりがあり、横穴式石室を埋葬施設とする前方後円墳が存在すること、そして、その石室の特徴についてもご講演いただきました。
但馬を中心に、横穴式石室や出土品から当時の地域社会の様子がわかる事例として、大変詳細に、具体的にお話していただきました。