以前、「自宅でも考古博11」で、土器や石庖丁から弥生人の右利き、左利きについて考えました。今回は絵について考えます。
考古学者の故・佐原真さんは、右利きの人が絵を描くと、動物や船などの絵は左側を向いたり、左側に進む絵になる、といいました。
サケ、シカ、シュモクザメの描かれた板、弥生時代
(豊岡市袴狭(はかざ)遺跡)
船団の描かれた板、古墳時代
(豊岡市袴狭遺跡)
復原された準構造船を斜め前から見た様子
ところが、昨秋の特別展「埴輪の世界」で紹介した東殿塚古墳(奈良県天理市)の円筒埴輪に描かれた船は、鳥の向きや旗のたなびく方向から舳先は右側であると考えられます。
埴輪に描かれた船(東殿塚古墳/奈良県天理市)
日常を表現した絵は左側を向くことが多いのですが、古墳に関係するものに描かれた絵は、通常とはあえて反対側に向けて描かれていて、
「えっ?そっちの方向??」
と、違和感を感じさせるような意図が読み取れます。
あえて右向きに進むように描かれた船は、死者の魂を乗せてあの世に向かっているのかもしれませんね。
(学芸課 上田健太郎)