(改修前巫女写真+現在の巫女写真)
左は銅鐸を持っていますが、右では何も持っていませんね。左は巫女が銅鐸をまさに埋納しようとしている姿を表現し、左は銅鐸が巫女の手から離れて、打ち鳴らされる状態になった姿を現しています。今日はどうしてこうなったかについて、お話したいと思います。
当館で採用しているフィギュアなどを用いた展示は、来館者にイメージを伝えやすい反面、一度作ってしまうとなかなか変更が難しいところがあります。
しかし、考古学の世界では、新たな資料の発見により、これまでの解釈が大きく変わってしまい、展示についても再検討する必要が生じるケースがあります。
巫女のフィギュアから銅鐸が消えたのは、まさにそのケースで、平成27年に南あわじ市で発見された松帆銅鐸が深く関連しています。
松帆銅鐸は舌と呼ばれる金属棒が銅鐸内部に入った状態で埋められており、舌上部の穴及び銅鐸の鈕(釣り手)の部分に植物繊維やその痕跡が残存していました。また、銅鐸内面と舌の双方に衝撃によると考えられる凹みも見つかりました。
つまり、銅鐸は吊り下げられた舌が銅鐸内面にぶつかることで、音を出していることが明らかになったのです。これまでも銅鐸は鳴らすものと想定されていましたが、金属舌を伴う例は数少なく、紐状の繊維が見つかったのも初めての事でした。
この成果をもとに、当館では銅鐸の埋納状況を表す展示から、銅鐸の使用状況に重点を置いた展示、つまり紐で固定された銅鐸を打ち鳴らすことのできる展示に変更したのです。
(銅鐸の音:動画 約15秒)
(埋蔵文化財課 鐵 英記)