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特別展関連講演会 第5弾「ひょうご5カ国の縄文を歩いたころ」



いよいよ梅雨入り目前の日本列島。
前日は博物館周辺でも激しい雨でしたが、この日は晴れの一日となりました。

*   *   *

特別展「縄文土器とその世界」の連動企画として行われてきた講演会もファイナル。
「ひょうご5ヵ国の縄文を歩いたころ」と題して、
当館の石野博信名誉館長が講演するはずでしたが…


都合により講師変更。今回の特別展を企画した深井明比古社会教育推進専門員が、
急遽ピンチヒッターを務めることとなりました。


「資料は届けられていた」ということで、資料も・演題も
そのまま(!)引き継いでの講演会。
急な講師変更にも関わらず、大勢の方にご参加いただきました。
ありがとうございました!


考古学者として様々な時代の研究を進めてこられた石野名誉館長ですが、
初めての著書が『縄文時代の兵庫』であり、
特に縄文時代には強い関心を寄せておられた、とのことでした。


今から30年以上前に書かれた本を紐解きながら、その後の調査事例も交えつつ、
兵庫県の縄文時代の研究がどう進んできたか紹介する、内容でした。

*   *   *

旧5か国からなる兵庫県ですが、縄文時代早期の遺跡は北部の但馬の丘陵上に多く、
後期には播磨も含めた扇状地・沖積地へ広がる状況とのこと。


但馬では高原地帯を中心に多くの縄文遺跡があり、古くから研究が進んだとのこと。
特に神鍋高原にある縄文時代の遺跡は、深井自身が考古学の勉強を始めたころ
調査にかかわった場所で、思い出もたっぷりに遺跡の様子が紹介されました。


丹波では、今回の特別展にも展示された丹波市梶遺跡で採集された石棒について紹介。
精神性を表す遺物が多い縄文時代の中でも、強烈な印象を受ける遺物です。


播磨では、特別展で展示している神河町の福本遺跡や姫路市の丁・柳ケ瀬遺跡、
高砂市の日笠山貝塚について紹介されました。出土した縄文晩期の人骨は
考古博物館にも展示されていますが、瀬戸内海での貝塚は大変珍しいものです。


摂津では、芦屋市の朝日ヶ丘遺跡や神戸市の篠原遺跡などの紹介とともに、
伊丹市口酒井遺跡出土の縄文土器に籾の痕があることに触れ、
縄文時代からコメ作りが本格化する弥生時代への移りかわりは、
「突然でなく時間をかけて」おこなわれたと『縄文時代の兵庫』で述べられ、
その後調査された多くの遺跡が、それを裏付けているとのこと。


淡路は、佃遺跡が見つかる前は、ほとんど縄文時代の遺跡が知られていなかった
状況や、その中で工事中に発見され重機に追われながら調査された
育波堂の前遺跡の文化財保護に関わるエピソードも披露されました。


石野名誉館長は、実際自分で現場に立って感じること、
またデータなどの事実を大切にする姿勢で研究されています。
これからの研究者も受け継いでゆくべきだ、と深井は語ります。


兵庫にある旧の5カ国は気候や地形によって育まれた地域で、個性は縄文時代まで
さかのぼる可能性を指摘。「縄文土器も地域ごとに特徴があり、土器の顔つきから
地域を読み解くところも、特別展のテーマの一つだ」と締めくくりました。

*   *   *

終了後は展示室に場所を変え、説明が行われました。講演会で話題が出た
「土器の顔つき」について、皆さん興味深く耳を傾けておられました。



我々が暮らす地域の個性が、遠く縄文時代から脈々と受け継がれて
いることに、改めて思いする機会にもなりました。

急な講師変更で、参加された皆様には大変ご迷惑をおかけしました。
名誉館長のお話は、また機会を改めてお届けできればと思います。
急なピンチヒッターとなった深井専門員もお疲れさまでした。

*   *   *

 残り20日となった特別展「縄文土器とその世界 兵庫の1万年」。
ぜひお見逃しなきよう!


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