スキップしてメイン コンテンツに移動

シンポジウム『銅鏡を科学する』 -考古博物館の「加西分館」をご存じですか-

 県立考古博物館に加西分館「古代鏡展示館」があるのをご存じでしょうか。中国古代鏡を中心に唐王朝を象徴する500点あまりの作品を収蔵しています。
 平成30年度から兵庫県立考古博物館と日鉄テクノロジー株式会社が協力し、古代鏡の素材である青銅の組成分析や鉛同位体比分析などの化学分析を実施しており、この度、その成果報告会が当館の講堂で、シンポジウム「銅鏡を科学する-千石コレクションの化学分析とその成果-」と題して開催されました。



 最初に当館館長が開会の挨拶をしました。
 会場は感染症対策のもと、定員72名で行われました。

 日鉄テクノロジー株式会社の迫田彰人顧問からもご挨拶をいただきました。

 最初のパネラーは、加西分館の種定淳介学芸員です。「千石コレクションと古代鏡展示館」と題して、古代鏡の基本となる形(円盤形であること)、鏡背面の紋様の持つ意味、鏡に込められた想い、材質などについて講演がありました。

 「古代鏡展示館」に展示されている千石コレクションは、鏡の文化を知るうえで、極めて重要で、遺存状況も極めて良好であり、歴史的にも美術的にも世界的な銅鏡コレクションと位置付けられています。

 続いて、日鉄テクノロジー株式会社尼崎事業所の文化財調査・研究室の渡邊綾子室長からは、「分析方法とその原理について」と題して、講演していただきました。
 銅鏡の成分や、元素、組成の分析方法としては、蛍光X線分析(XRF)とICP分析が、鉛の産地を推定をする方法としては、鉛の同位体比分析があるそうです。
 検体を傷つけることなく分析できる蛍光X線分析は、迅速・簡便ですが、得られる情報に限界があり、ICP分析は正確に多元素を測ることができ、微量元素の検出も可能ですが、検体のサンプリングの必要があるなど、それぞれの長所と短所について、わかりやすいように話していただきました。

 最後は、千石コレクション調査研究委員会の難波洋三委員長から「千石コレクションの銅鏡を中心とする科学的研究の成果」と題して、講演していただきました。

 今回の分析が千石コレクションで真贋が確定できていなかった戦国時代の銅鏡が贋作でなかったことが判明したこと、銅鏡に使用された鉛の産地に関する議論に影響するような発見があったことなど、分析結果についての総評をされました。

 後半は、3人のパネラーと和田館長により、「銅鏡を科学する」をテーマにシンポジウムが行われました。
 
 和田館長が、休憩中にお客様からいただいた質問の中から、パネラーに問いかけます。「東アジアはなぜ鉛の成分比が高いのか」…。

「粘性が弱くなり、鋳造しやすいので、あえて鉛の量を増やしたのではないかとも考えられます」
 「日本の青銅器の原料はどこから?」「世界で銅鏡が多いのはどの地域か?」など、いろいろ質問が投げかけられました。

 最後に、今後の千石コレクションの調査研究について、渡辺室長からは、「できるだけ多くの分析の機会が欲しい。全元素の分析をぜひやってみたい」、難波委員長からは、「ICP分析をできるだけ多く実施して、世界で使える基礎的データの構築をしたい。また、千石コレクションは美術的にも素晴らしい作品が多いので、東京などで多くの人に見てもらえる機会があればと思う」と述べられ、シンポジウムは終了しました。

*  *  *  *  *

 兵庫県立考古博物館加西分館「古代鏡展示館」は、この千石コレクションを収蔵し公開するための施設として、平成29年(2017年)4月に、兵庫県立フラワーセンター内に開館しました。
 千石コレクションは、加西市在住の千石唯司氏から寄贈された古代中国鏡を中心とした中国古代の青銅器等です。


 昨年、千石氏から追加の寄贈を受け、令和3年(2021年)3月には第2展示室が完成し、現在そのコレクションは500点余りを数えます。

 ・場 所  加西市豊倉町飯森1282-1
 ・休 館  毎週水曜日(祝日の場合は翌平日) 
       年末年始(12/28~1/1)
 ・観覧時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
       ※ フラワーセンター入館は16:00まで、退園は17:00まで
 ・観覧料  一般100円 高校生以下無料
       ※ 別途フラワーセンター入園料(一般500円など)が必要です。
 アクセスその他は、加西分館「古代鏡展示館」ホームページをご覧ください。

 ただいま「古代鏡展示館」では、令和4年3月13日まで秋季企画展「象嵌-象(かたど)る/嵌(は)める」を開催中です。皆様のご来館をお待ちしています。

 フラワーセンターにお越しの際にはぜひ、お立ち寄りください。

このブログの人気の投稿

あなたは縄文人? 弥生人?

人の顔形はさまざま! 顔の輪郭、髪の毛、眉の形、目・まぶた・鼻・口の形は各人ちがいますが、 これらのパーツも縄文人に多い形、弥生人に多い形があります さて、あなたは 縄文人? 弥生人? まずは「自分の顔をつくってみよう」 縄文顔:四角い顔、太い眉、どんぐりまなこ、二重のまぶた、広がった鼻、分厚い唇、毛深い 弥生顔:面長顔、細い眉、切れ長の目、一重のまぶた、小さな鼻、薄い唇、ひげが薄い まず自分の顔をつくってみましょう これらのパーツをつかって・・・ 自分の顔をつくってみましょう そして、左のページを持ち上げ、右の顔に被せるように折りたたみます そして開いてみると 左に顔が移りましたが、 緑 と 橙色 のパーツに 緑は縄文人 橙は弥生人 各パーツが混じっています 現代人は 縄文人的な要素 と 弥生人的要素 が混じっているのです。 中国大陸や朝鮮半島などから各時代に渡来し、混血し、今の日本人になったと考えられます 「自分の顔をつくってみよう」 は 考古博テーマ展示室「人」のコーナーにあります 是非自分の顔をつくって、試してみてください!

明石駅・西明石駅のむかし

特別展「鉄道がきた!ー舟運・海運・馬車道・鉄道ー」 写真展 協力:西日本旅客鉄道株式会社神戸支社 明石駅・西明石駅のむかしの写真があります 明石駅・西明石駅のむかし 昭和9年の明石駅 昭和30年代前半の明石駅 昭和39年の明石駅 昭和47年の西明石駅(新幹線) 西明石駅の在来線と新幹線(昭和47年) 大阪ー神戸間開通140年記念写真展 是非ご覧ください 【お知らせ】 11月1日(土)10:00~16:00 兵庫県立考古博物館とその周辺を会場に 全国古代体験フェスティバル 2014を開催 雨天決行! ---------------------------------------------------------------------- 大阪ー神戸間開業140周年記念写真展 協力:西日本旅客鉄道株式会社神戸支社 11月30日(日)まで 1階エントランスホール ---------------------------------------------------------------------- 次回の特別展講演会 11月8日(土)13:30~15:00 「山陰山陽連絡鉄道敷設計画と播磨・境ルートの検証」 小西 伸彦 (吉備国際大学外国語学部准教授) ---------------------------------------------------------------------- 11月15・16日(土・日) 15日:12:00~15:30 16日:10:00~15:30    ミニSLやミニ特急列車に乗ろう!(ミニ鉄道走行会)    協力:OSライブスティームクラブ 兵庫県立考古博物館 体験広場にて    ※別途観覧券要・開始30分前から整理券配布・お一人様2回まで    ※小雨決行(天候により中止になる場合があります)。 駅そば・駅弁販売     ~駅弁の掛け紙は復刻デザイン!~    姫路名物駅そば、駅弁

#自宅でも考古博 23 「型式の移り変わり」

  当館では考古学の成果だけではなく、考古学での「考え方」についても、さりげなく展示しています。東エントランスを入ったところにある「ときのギャラリー」もそうですが、「発掘ひろば」にもそうした展示があります。  「発掘ひろば」の左奥、壁に丸い水筒のような須恵器が四つ並んでいます。これは古墳時代の「提瓶」(ていへい)と呼ばれる須恵器で、型式の移り変わりを実感していただくための展示です。  考古学では、型式の移り変わりを考える際にポイントとなる「ルジメント」という考え方があります。もともとは生物学の用語で、日本語では「痕跡器官」となります。例えば、人の尾てい骨のように、昔は機能していても、現在は退化して、痕跡のみとなっている器官の事です。  提瓶はこの「ルジメント」が判りやすいものですが、それにあたるのはどの部分でしょうか? 提瓶の型式変化    肩の部分に注目してください。右から丸い輪が両方についているもの、輪ではなく鉤状の突起が付いているもの、ボタン状になっているもの、何もついてないものと変化しているのが分かると思います。  これは提げるための紐を結ぶための部分が、その機能が失われることによって、時期が新しくなるにしたがって、退化していくことを示しています。つまり、展示でいうと右から左にかけて、型式が新しくなるということです。  でも、変化の方向としては「提げるという機能が追加されていくという変化(左から右)でもいいのでは?」というツッコミが入りそうです。実は高校の授業で提瓶を使って、ルジメントの説明をしたことがあるのですが、2回の授業とも生徒の圧倒的多数がそういう意見でした。  では、変化の方向を決めるのは何かを再度考えてみます。機能が追加されていく方向に変化するのであれば、紐がひっかけられないボタン状の段階は必要ありませんよね。したがって、型式が変化する方向は右から左ということになるのです。  ルジメントについて、何となくわかっていただけたでしょうか?実際の型式変化については、ルジメントだけではなく、層位学の考え方(古いものが新しいものより深い地層から出土する)なども加味しています。この考え方についても、「発掘ひろば」で紹介していますので、ご確認ください。  ところで、提瓶の変化はどうして起こるのでしょうか?

過去の記事一覧

もっと見る