スキップしてメイン コンテンツに移動

特別展関連講演会「埴輪の源流ー古代中国と日本ー」


現在好評開催中の特別展「埴輪の世界」における関連講演会の第3回目。
最後を締めくくる講師は、当館の和田晴吾館長です。

特別展の内容である「埴輪の世界」をより深く知るために、
埴輪がもつ意義や、その源流として古代中国との関連を論じる内容でした。

今回の特別展が、和田館長自身も評価や位置づけに深く関わった
「池田古墳出土品 重要文化財指定記念」ということもあって、
はじめに展示に込めた思い入れも触れていただきました。

講演は、「埴輪とは何か?」という話題からスタート。
埴輪は、壺や家や鳥といった身の回りにあった実用品や実物をモデルにしており、
現実社会の延長を表現しようとしたもの、と位置付けられました。

過去の埴輪研究は、形や組み合わせなど「埴輪そのもの」を考えるもので、
意味を考えるには、置かれた場所である「古墳」との関係に注目する
必要がある、と指摘されました。

古墳は、時代を重ねるとともに、造り方も複雑になります。
理由として、葬る意識が手厚く複雑に変化したことが考えられ、
亡くなった人の魂を邪悪なものから防ぐために、密封した棺と
保護するための槨を作るように変化した、とのこと。

また古墳が、埴輪や葺石を並べて何らかの「世界」を表現している点に注目。
「墓」だけでなく、古墳は死後の世界=「他界」を表現した場所でもあり、
埴輪も他界を表現するために、様々な形を整えてきたことがわかる、
様々な形は他界での生活に必要なものを表現したものと考えられます。

「他界」を表現した点は、古代中国の王墓と共通する特徴です。
中国皇帝の墓には、時代とともに出入り口や扉、通路などが登場し、
死者の「動き」を想定して墓が造られるように変化した、とのこと。

さらに家形の柩、壁画や明器、俑などが時代とともに発達して、
中国の王墓では「他界」の表現が複雑で多彩になったと指摘。
他界を目に見えるよう表現したところが、埴輪の意義も共通し、
その「源流」と捉えられると論じました。

最後に古墳について、我が国において「死んだ後の世界を表現」した
初めてのもので、埴輪はその表現のため古墳に並べられたものと、
締めくくられました。

講演会の後は、その余韻を展示品で確かめる解説会が恒例になっています。
今回は大きなサプライズ!館長自ら、展示品から「古墳の世界」を説明。
参加の皆さん、ラッキーでしたね!

特別展示室は、いつも以上に熱気にあふれていました。
これにて、特別展「埴輪の世界」の関連講演会は終了です。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

*   *   *

当館の秋の特別展もいよいよ後半戦に入りました。
特別展「埴輪の世界 ‐埴輪から古墳を読みとく‐」は
令和元年 12月1日(日曜日)まで。
かわいい埴輪・美しい埴輪・大きな埴輪・小さな埴輪…
が皆様をお待ちしています。お見逃しなきよう。

このブログの人気の投稿

あなたは縄文人? 弥生人?

人の顔形はさまざま! 顔の輪郭、髪の毛、眉の形、目・まぶた・鼻・口の形は各人ちがいますが、 これらのパーツも縄文人に多い形、弥生人に多い形があります さて、あなたは 縄文人? 弥生人? まずは「自分の顔をつくってみよう」 縄文顔:四角い顔、太い眉、どんぐりまなこ、二重のまぶた、広がった鼻、分厚い唇、毛深い 弥生顔:面長顔、細い眉、切れ長の目、一重のまぶた、小さな鼻、薄い唇、ひげが薄い まず自分の顔をつくってみましょう これらのパーツをつかって・・・ 自分の顔をつくってみましょう そして、左のページを持ち上げ、右の顔に被せるように折りたたみます そして開いてみると 左に顔が移りましたが、 緑 と 橙色 のパーツに 緑は縄文人 橙は弥生人 各パーツが混じっています 現代人は 縄文人的な要素 と 弥生人的要素 が混じっているのです。 中国大陸や朝鮮半島などから各時代に渡来し、混血し、今の日本人になったと考えられます 「自分の顔をつくってみよう」 は 考古博テーマ展示室「人」のコーナーにあります 是非自分の顔をつくって、試してみてください!

明石駅・西明石駅のむかし

特別展「鉄道がきた!ー舟運・海運・馬車道・鉄道ー」 写真展 協力:西日本旅客鉄道株式会社神戸支社 明石駅・西明石駅のむかしの写真があります 明石駅・西明石駅のむかし 昭和9年の明石駅 昭和30年代前半の明石駅 昭和39年の明石駅 昭和47年の西明石駅(新幹線) 西明石駅の在来線と新幹線(昭和47年) 大阪ー神戸間開通140年記念写真展 是非ご覧ください 【お知らせ】 11月1日(土)10:00~16:00 兵庫県立考古博物館とその周辺を会場に 全国古代体験フェスティバル 2014を開催 雨天決行! ---------------------------------------------------------------------- 大阪ー神戸間開業140周年記念写真展 協力:西日本旅客鉄道株式会社神戸支社 11月30日(日)まで 1階エントランスホール ---------------------------------------------------------------------- 次回の特別展講演会 11月8日(土)13:30~15:00 「山陰山陽連絡鉄道敷設計画と播磨・境ルートの検証」 小西 伸彦 (吉備国際大学外国語学部准教授) ---------------------------------------------------------------------- 11月15・16日(土・日) 15日:12:00~15:30 16日:10:00~15:30    ミニSLやミニ特急列車に乗ろう!(ミニ鉄道走行会)    協力:OSライブスティームクラブ 兵庫県立考古博物館 体験広場にて    ※別途観覧券要・開始30分前から整理券配布・お一人様2回まで    ※小雨決行(天候により中止になる場合があります)。 駅そば・駅弁販売     ~駅弁の掛け紙は復刻デザイン!~    姫路名物駅そば、駅弁

#自宅でも考古博 23 「型式の移り変わり」

  当館では考古学の成果だけではなく、考古学での「考え方」についても、さりげなく展示しています。東エントランスを入ったところにある「ときのギャラリー」もそうですが、「発掘ひろば」にもそうした展示があります。  「発掘ひろば」の左奥、壁に丸い水筒のような須恵器が四つ並んでいます。これは古墳時代の「提瓶」(ていへい)と呼ばれる須恵器で、型式の移り変わりを実感していただくための展示です。  考古学では、型式の移り変わりを考える際にポイントとなる「ルジメント」という考え方があります。もともとは生物学の用語で、日本語では「痕跡器官」となります。例えば、人の尾てい骨のように、昔は機能していても、現在は退化して、痕跡のみとなっている器官の事です。  提瓶はこの「ルジメント」が判りやすいものですが、それにあたるのはどの部分でしょうか? 提瓶の型式変化    肩の部分に注目してください。右から丸い輪が両方についているもの、輪ではなく鉤状の突起が付いているもの、ボタン状になっているもの、何もついてないものと変化しているのが分かると思います。  これは提げるための紐を結ぶための部分が、その機能が失われることによって、時期が新しくなるにしたがって、退化していくことを示しています。つまり、展示でいうと右から左にかけて、型式が新しくなるということです。  でも、変化の方向としては「提げるという機能が追加されていくという変化(左から右)でもいいのでは?」というツッコミが入りそうです。実は高校の授業で提瓶を使って、ルジメントの説明をしたことがあるのですが、2回の授業とも生徒の圧倒的多数がそういう意見でした。  では、変化の方向を決めるのは何かを再度考えてみます。機能が追加されていく方向に変化するのであれば、紐がひっかけられないボタン状の段階は必要ありませんよね。したがって、型式が変化する方向は右から左ということになるのです。  ルジメントについて、何となくわかっていただけたでしょうか?実際の型式変化については、ルジメントだけではなく、層位学の考え方(古いものが新しいものより深い地層から出土する)なども加味しています。この考え方についても、「発掘ひろば」で紹介していますので、ご確認ください。  ところで、提瓶の変化はどうして起こるのでしょうか?

過去の記事一覧

もっと見る