展示の案内をしていて、よく質問されるのが、この大型の甕についてです。
「これって文様ですか?」
須恵器 甕(かめ)
市辺遺跡(丹波市)出土
市辺遺跡(丹波市)出土
奈良時代
近づいて表面をよく見ると、なにやら凸凹として文様が付けられているようです。

表面にある文様?
実はこれは装飾のために付けられた文様ではなく、大きな土器をつくるときに使われる道具(叩き板)の痕跡で、「叩き目(たたきめ)」と呼ばれるものです。
土器作りの道具
(左:当て具、右:叩き板)
大きな土器の作り方ですが、まず、粘土を紐状にのばし、それをぐるぐると巻き上げ、あるいは輪っか状にした粘土を積み上げて全体の形をつくります。
その後、土器の内側に当て具をあて、外側から叩き板で粘土を叩き、粘土を叩き伸ばすようにして形を整えていきます。
このとき、当て具には同心円(何重もの円)が刻まれ、叩き板には平行線や格子目が刻まれているので、土器の内側には当て具の跡(当て具痕)がつき、外側には叩き板の痕跡(叩き目)がつくのです。
内側に付いた当て具の痕跡
同心円が重なりあう
道具に刻み目が付けられるのは、粘土を叩き締めるのに効率がいいためと考えられます。
これで解決!・・・と、思ったら、
「じゃあ、これもそうなんですか?」と、さらに質問が。
須恵器 甕
新宮山中世墓(養父市)出土
鎌倉時代
表面にある文様?
ん~、、、これは単なる道具の痕跡、とは言えないですよね、、、
綾杉文の叩き目、と呼ばれているもので、このような装飾を意図した美しい叩き目が他にも数種類あります。
本来は、粘土の叩き締めのために付けられた道具の痕跡ですが、時代と地域によっては装飾効果をねらうものもあったようです。
細かく観察することで、当時の陶芸作家のオシャレな感覚が伝わりますね。
(学芸課 中村 弘)