11月13日(日)に西宮市津門大塚町にて、津門大塚町遺跡の発掘調査現地説明会を開催しました。
津門大塚町遺跡は、アサヒビール西宮工場の解体に伴って行われた西宮市による調査で存在が明らかとなった遺跡で、これまでの調査では、古墳時代から近世まで、長期にわたって集落が営まれていたことが確認されています。
【ドローン全景写真(調査地と周辺の風景)】
〔写真:上が北 東西のJR神戸線と南北の阪急今津線が交差するところ〕
〔写真:上が北 東西のJR神戸線と南北の阪急今津線が交差するところ〕
兵庫県ではこの津門大塚町遺跡内に、県立西宮総合医療センター(仮称)の建設を計画しており、その建築に先駆けて今回の発掘調査を行うことになりました。病院建設予定地内にある遺跡の大部分は、近代以降の造成により失われていたので、遺跡が残っている3箇所で発掘調査を行いました。今回の現地説明会は、北側の2、3区の調査成果の発表となります。
今回の調査では合計8基の埋没古墳の存在が明らかとなりました。出土遺物から、1号墳のみ古墳時代前期の円墳で、そのほかは古墳時代後期のものであることが判りました。後期の古墳のうち、8号墳は全長21m(周濠を含めると直径約30m)の円墳で、南西側に「造り出し」と呼ばれる突出部が設けられています。墳丘や埋葬施設は既に失われていますが、周濠の中から、円筒埴輪や人物埴輪等の形象埴輪、須恵器等多数の遺物が出土しており、被葬者はこの地域の首長クラスであったと想定されます。
【8号墳の造り出し】
2~7号墳は、全長10m前後の小型の方墳で、こちらの周濠の中からも、埴輪や須恵器の遺物が多く出土しました。中でも5号墳では牛と馬の歯が出土し、古墳での祭祀に伴って、牛馬を供える儀礼が行われたことが考えられます。2~7号墳はその規模から、8号墳の被葬者に従属的な立場にあった人々の墓であると想定されます。
【2~7号墳全景】
今回、臨海部で見つかった埋没古墳は、西宮市で初めての事例です。造り出し付円墳の主墳とそれに付随する小方墳群という構成や、牛馬を用いた儀礼、円筒埴輪や形象埴輪等多様な埴輪が樹立されたこと等、今回の調査は阪神地域における古墳時代社会を考えるうえで、非常に重要な成果となりました。
あいにくの悪天候の下での説明会となりましたが、600名を超える非常に多くの方々に来ていただき、大変盛況な会となりました。皆さん熱心に調査員の説明に耳を傾けられ、質問も多数出る等、我々自身もこの遺跡に対する地域の方々の関心の高さを改めて実感することができました。
新型コロナウイルス感染症対策により、動線の制限を行ったことに加え、午後からの天候の悪化により、急遽現場の一部の公開を中止することとなりました。見学者の皆様には何かとご不便、ご迷惑をおかけすることの多い説明会となってしまいましたが、参加者のご協力をいただき、大きな混乱もなく、無事に現地説明会を開催できましたことを感謝いたします。
なお、今後、調査は残りの1区の調査を進め、来年2月まで続く予定です。これからさらにどのような成果があがるのかご期待ください!