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10月 31, 2021の投稿を表示しています

シンポジウム『銅鏡を科学する』 -考古博物館の「加西分館」をご存じですか-

 県立考古博物館に加西分館「古代鏡展示館」があるのをご存じでしょうか。中国古代鏡を中心に唐王朝を象徴する500点あまりの作品を収蔵しています。  平成30年度から兵庫県立考古博物館と日鉄テクノロジー株式会社が協力し、古代鏡の素材である青銅の組成分析や鉛同位体比分析などの化学分析を実施しており、この度、その成果報告会が当館の講堂で、シンポジウム「銅鏡を科学する-千石コレクションの化学分析とその成果-」と題して開催されました。  最初に当館館長が開会の挨拶をしました。  会場は感染症対策のもと、定員72名で行われました。  日鉄テクノロジー株式会社の迫田彰人顧問からもご挨拶をいただきました。  最初のパネラーは、加西分館の種定淳介学芸員です。「千石コレクションと古代鏡展示館」と題して、古代鏡の基本となる形(円盤形であること)、鏡背面の紋様の持つ意味、鏡に込められた想い、材質などについて講演がありました。  「古代鏡展示館」に展示されている千石コレクションは、鏡の文化を知るうえで、極めて重要で、遺存状況も極めて良好であり、歴史的にも美術的にも世界的な銅鏡コレクションと位置付けられています。  続いて、日鉄テクノロジー株式会社尼崎事業所の文化財調査・研究室の渡邊綾子室長からは、「分析方法とその原理について」と題して、講演していただきました。  銅鏡の成分や、元素、組成の分析方法としては、蛍光X線分析(XRF)とICP分析が、鉛の産地を推定をする方法としては、鉛の同位体比分析があるそうです。  検体を傷つけることなく分析できる蛍光X線分析は、迅速・簡便ですが、得られる情報に限界があり、ICP分析は正確に多元素を測ることができ、微量元素の検出も可能ですが、検体のサンプリングの必要があるなど、それぞれの長所と短所について、わかりやすいように話していただきました。  最後は、千石コレクション調査研究委員会の難波洋三委員長から「千石コレクションの銅鏡を中心とする科学的研究の成果」と題して、講演していただきました。  今回の分析が千石コレクションで真贋が確定できていなかった戦国時代の銅鏡が贋作でなかったことが判明したこと、銅鏡に使用された鉛の産地に関する議論に影響するような発見があったことなど、分析結果についての総評をされました。  後半は、3人のパネラーと和田館長により、「銅鏡を科学

講演会「兵庫の鴟尾」

 現在開催中の特別展「屋根の上の守り神 -鴟尾・鯱-」に関連する講演会が開催されました。テーマはずばり、『兵庫の鴟尾』です。  講師は、(公財)兵庫県まちづくり技術センター埋蔵文化財調査部の垣内拓郎主査です。  盛りだくさんのメニューで兵庫の鴟尾の歴史や種類について解説していただきました。  会場は、新型コロナ感染症対策で定員72名とさせていただきました。ほぼ満席です。  始めに鴟尾について、素材や大きさの説明がありました。鴟尾は、古代寺院などの建物頂部の目立つところに使われています。写真の東大寺大仏殿の屋根の頂部の両端に置かれているものがそうです。(写真は当館特別展展示中の資料から)   鴟尾は、高さが1m前後の大型のものが多いそうです。写真の東大寺大仏殿の 鴟尾もかなり大きいんでしょうね。 素材は主に瓦製ですが、石製、金属製(銅製)などもあるようです。 展示中の 鴟尾復元模型(½) (平城宮第1次大極殿で使用 奈良文化財研究所蔵)      鴟尾の研究は、包括的・総合的な研究として、1980年の奈良文化財研究所の『日本古代の鴟尾』、大脇潔氏がまとめた1999年の『日本の美術 鴟尾』、2002年の『鴟尾の変遷』があり、2020年には奈良文化財研究所の『鴟尾・鬼瓦の展開Ⅰ-鴟尾-』のシンポジウムが行われたことなどを挙げられました。  兵庫県は、瓦製 鴟尾の出土遺跡が32か所あり、全国では 2020年度現在 296遺跡あり、近畿地方に多いとのこと。 【鴟尾の部位の名称 】  (奈良国立文化研究所『日本古代の 鴟尾』1980年から引用)  鴟尾は、崇峻元年(588年)に百済から瓦が伝来され、最古の寺、飛鳥寺の屋根瓦に使われて以降、7世紀後半から8世紀前半頃に古代寺院が全国的に増加するとともに生産、供給が拡大し、分布域が広がっていき (624年に46か所あった古代寺院が、692年には545か所に急増した)、 平安時代末頃(12世紀頃)に終焉したとのことです。  続いて、兵庫の鴟尾について、分布状況、様相について、詳しく紹介されました。  県内の鴟尾の出土数32の分布状況は、但馬2か所、丹波2か所、摂津西部1か所、播磨27か所で、圧倒的に播磨地域での出土が多く、白鳳時代・奈良時代のものが大半だそうです。  鴟尾の種類としては、以下の4種に大別して説明がありました。 ・百済様

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