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ほったんのなぜなぜコーナー 「夏季企画展:木簡編」

 


  

(ほったん)

今回の夏季企画展では「木製品」の展示がとても多いね。

1000年以上も昔の木製品が文字の読める状態で出てくるなんて信じられないなぁ。

それと、どうして但馬地域はひとがたや木簡などの出土が多いのかな?


 

(学芸員)

木製品が、このようなきれいな状態で残っているのはとても奇跡的なことなんだよ。

良好な状態で保存される環境としては、「乾燥(かんそう)」か正反対の「湿潤(しつじゅん)」の安定した状態が維持されていることが大事なんだ。

湿潤な環境としては川や井戸、それから低湿地などがあるけれど、但馬地域にはそのような条件に合う場所が多かったんだよ。

 

 「乾燥した状態では、劣化しにくい」というのは何となく分かるけれども、「湿潤」だと腐りそうな気がするんだけど。

 

そうだね。日本では気候の関係から、なかなか「乾燥した状態」という条件は難しくて、ここに展示してある木製品は湿潤な状態が保たれていたから、今まで残っていたんだ。どれも地中で一定の地下水が周りにある状態で静かに眠っていたんだね。

 

これら木製品を発掘した場合は、空気に触れてしまうと急速に乾燥が進んでしまって壊れてしまうんだ。それと太陽の光、紫外線も大敵になる。だから掘り出したらすぐに水の中で保管するんだ。

 

えーっ わざわざまた水に浸けちゃうの?

そんなことしたらよけいにバラバラになりそうな気がするけれど。

 

反対に水が空気を遮断して、乾燥したり腐ってしまうのを防いでいるんだ。

さらに、発掘した木製品を水から出しても大丈夫にするためには「保存処理」という作業が必要なんだよ。その作業にはいくつかの方法があるけれど、一番一般的なのはPEG(ポリエチレングリコール)という樹脂を溶かした60℃の溶液にじっくり1年以上の時間をかけて浸みこませる方法なんだ。



これが実際にその作業を行っているところだよ。

ちょうど、夏休み期間の7,8月に4日間(1日2回)「バックヤード見学ツアー」を行っているから遺物整理室や保存処理室などをじっくり見ることができるよ。

     ※バックヤード見学ツアー 〔7/24,31、8/14,21いずれも水曜日〕

 


 

ただ、この方法では仕上がりが黒ずんだ色になりやすいので、文字の書かれた木簡などはインスタントラーメンやコーヒーのようにフリーズドライ(凍結乾燥)させることができる「真空凍結乾燥器」を使った保存処理を行うんだ。

 


 


この真ん中に展示してある「長見寺廃寺の柱」を見てごらん。これはさっき説明したPEG樹脂による保存処理を行っているんだよ。

今、残っているこの柱は地中に据えられていたものが残っていて、地上に出ていた部分は全く残っていないんだ。こんな大きな柱でも空気に触れていると時の経過とともに腐って溶けてしまうんだ。



 

発掘現場で掘り出したものは土が付いたまま持ち帰って、整理作業の中で丁寧に泥などを水で洗い流すんだけれども、文字が書かれている場合もあるから注意深く丁寧に洗浄するんだよ。そして、木製品の場合は保存処理を行うんだ。防腐・樹脂浸透などの処理を施して展示できるようになるんだ。

 

そうか、土器よりデリケートな作業が必要なんだね。

そのお陰で、こちらの木簡はきれいに文字が残っているんだね。



 

これらは官衙(かんが)といって、今でいう県庁のような役所の近くから出土したものなんだ。今も昔も役所の仕事の基本は「文書の作成・伝達・記録」がメインだからね。それと飛鳥・奈良時代に文字の読み書きができたのは役人や偉いお坊さんなどの限られた人だけだったので、木簡は都や地方の役所跡から出土することが多いんだ。


「大同五年」「弘仁三年」・・こっちには年代も書かれているよ。



そうなんだ。特に年代が書かれているものは重要で、見つかった遺跡や一緒に埋もれた遺物の年代を決める貴重な証拠となるんだ。年代がわかる木簡と一緒に出てきた土器の年代も絞り込むことができるので、同じ形の土器が見つかった他の遺跡の年代までわかるようになるよ。


 薄くて読みにくいものもあるけれど、こんなにきっちり残るものなんだね。

そうだね、意外と墨で書いた文字は残っていて、目で見て判読しにくい場合は、赤外線を使った装置で文字を見ることもあるよ。

 じゃあ、ボクもここにある木簡になんて書いてあるかじっくり観察させてもらうよ。夏休みは特別展示室に泊まり込もうかな。

 

ダメダメ家に帰って宿題もちゃんとしないと。

ただ、木簡は会期の途中で入れ替えがあるから、あまりゆっくりしていると全部見きれないからね。

 

まだ、夏休みが始まったばかりなのに宿題のことは言わないで!



 

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