スキップしてメイン コンテンツに移動

「水鳥形埴輪」 

 

 

今回ご紹介するのはファンの多い「水鳥形(みずどりがた)埴輪」です。

この愛嬌のある(とぼけた?)表情に癒されます。 



先日開幕した夏季企画展でも、展示室に入って最初に目に飛び込んできます。


 この水鳥は兵庫県のほぼ中央に位置する朝来市の「池田古墳」で出土しました。池田古墳は全長が約135mもあり、但馬地域で最大規模を誇る前方後円墳です。

古墳は五世紀初頭の築造で、墳丘の中央部を横断するように敷設された国道の改良工事に伴って発掘調査され、造出(つくりだし:古墳に付属する壇状施設))や渡土堤(わたりどて:墳丘と周囲とを渡す施設)など古墳に付属する施設から、水鳥形、家形、盾形、船形等の形象埴輪や、土器・食物形土製品などの小型模造品が多数出土しています。

 

  墳丘(上が後円部)と周濠(墳丘を取り囲む濠)左右に走るのが国道9号。

 

 ここで、少しこの池田古墳の発掘調査について紹介したいと思います。

調査歴は、遡ること昭和46年度に国道9号線和田山バイパス建設に伴う事前調査で前方後円墳の存在が確認され、最初の発掘調査が行われました。この調査は架橋による保存が決定していたため、ある程度保存を前提とした調査となっています。

その後いくつかの周辺調査を経て、平成20年度から22年度にかけて、架橋を盛土にするための本格的な第1~第3次調査を実施しました。

 

出土した「渡土堤」は、全国で初めてほぼ完全な形で見つかったことから、現地説明会が平成2331日に行われました。約300名の方々や新聞社が取材に来られ、10日にはテレビ局の取材もあったそうです。(ただ、翌11日にあの東日本大震災が発生し、未放映となってしまいました・・・)


           地中から現れた墳丘の葺石(前方部左側)

 

にわたる調査を受けて、整理作業が平成23年度から26年度の4年間行われました。えらく長期間の作業になるんだなぁと思われるかもしれませんが、調査で出土した埴輪が「28ℓ入りのコンテナに658箱分もあった」と聞けば、納得されるのではないでしょうか。


                当館地下の収蔵庫

 

 

地道な作業の結果、水鳥形埴輪は24体以上出土しており、これは全国でも最多を誇るものです。

           


 これらの水鳥は写実性に優れ、口ばしや羽、足などの形や体の表現、製作手法も多様です。記録として残すためには実測が必須ですが、それまでの手法では多くの手間と時間が必要となることから、ここで新たな手法を取り入れました。

それは、“3次元レーダー測量”と“CTスキャン投影”です。

その活用により精度・効率性、また製作技法の解明に大変有効な効果がありました。

 

各部分の分析結果から水鳥のモデルとなったのは雁鴨類と判明。長い首を表現したものはハクチョウ、首が短くまたは太いものはカモ。注目されるのが小鳥を伴ったものですが、これはカルガモか? しかしカルガモの生態として親鳥の背に小鳥が乗ることがあるのか?それならカイツブリの可能性もあり?

イメージ上の創作も考えられることから、これはやはり製作者の古代人にお伺いするしかないですね。

 

 ちなみに、古墳時代においては、水鳥は他界を象徴する存在であったともいわれています。昔の人にとっては水鳥が亡くなった人をあの世に導いてくれる存在だと考えていたのかもしれません。


 
 お盆も近いですから、水鳥形埴輪を見てご先祖様のことを思い出すのも一つの楽しみかたではないでしょうか。          

             首を長~くしてお待ちしています。


〔参考文献〕兵庫県立考古博物館紀要 第9号(2016年)、第10号(2017年)、第11号(2018年)、第13号(2020年)

このブログの人気の投稿

あなたは縄文人? 弥生人?

人の顔形はさまざま! 顔の輪郭、髪の毛、眉の形、目・まぶた・鼻・口の形は各人ちがいますが、 これらのパーツも縄文人に多い形、弥生人に多い形があります さて、あなたは 縄文人? 弥生人? まずは「自分の顔をつくってみよう」 縄文顔:四角い顔、太い眉、どんぐりまなこ、二重のまぶた、広がった鼻、分厚い唇、毛深い 弥生顔:面長顔、細い眉、切れ長の目、一重のまぶた、小さな鼻、薄い唇、ひげが薄い まず自分の顔をつくってみましょう これらのパーツをつかって・・・ 自分の顔をつくってみましょう そして、左のページを持ち上げ、右の顔に被せるように折りたたみます そして開いてみると 左に顔が移りましたが、 緑 と 橙色 のパーツに 緑は縄文人 橙は弥生人 各パーツが混じっています 現代人は 縄文人的な要素 と 弥生人的要素 が混じっているのです。 中国大陸や朝鮮半島などから各時代に渡来し、混血し、今の日本人になったと考えられます 「自分の顔をつくってみよう」 は 考古博テーマ展示室「人」のコーナーにあります 是非自分の顔をつくって、試してみてください!

須磨駅家はあっちかな?

ただいま開催中の 風土記1300年記念特別展・阪神・淡路大震災20年展 「古代官道 山陽道と駅家(うまや)ー律令国家を支えた道と駅ー」 神戸市須磨区に所在する 福祥寺(須磨寺) 古代山陽道 はこの寺の南方の海岸沿い 又は妙法寺や大山寺付近を通るルートが考えられています 須磨駅家は大田町遺跡も候補地であり、福正寺奥の院から望んでみました 福祥寺奥の院から高野山方向を望む (須磨駅家は手前の家並み付近か) JR須磨駅方面から参道を北にすすんで、龍華橋を渡れば 「仁王門」 堂々とした 八脚門 駅家の正面の門も八脚門です この門には 鬼瓦が さらにすすむと 唐門付近からみる本堂 ここにも いたるところに 「鬼瓦」 山陽道の駅家の発掘でも鬼瓦が出土しています このように使われていたのでしょうね 宝物館では源平ゆかりの宝物や歴史的遺物が展示されています 県指定文化財の「鰐口」(わにぐち) 貞治5(1366)年銘 鰐口は本堂正面の軒先上部に吊り下げて打ち鳴らす仏具 ♪宝物館前には考古博のパンフレットも掛けられていました!ありがとうございます♪ 旧海岸線沿い、古代山陽道が通り、 須磨駅家は前方付近にあったのでしょう 皆さんも古代山陽道や沿線の歴史文化遺産を訪ねてはいかがですか 風土記1300年記念特別展・阪神・淡路大震災20年展 「古代官道 山陽道と駅家(うまや)ー律令国家を支えた道と駅ー」 好評開催中(6月22日まで) 【お知らせ】 5月10日(土)13:30~15:30 (12:50から整理券配布予定) 特別講演会 「古代の山陽道と瀬戸内海の交通」 松原弘宣(愛媛大学名誉教授) 古代の交通史に関する多数の論文を執筆されています! ご期待ください!

蚕起食桑?

草木が茂り、万物の生気が満ち始めるこの頃を、二十四節気で「小満」といい、その最初の5日間を「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」と呼ぶそうです。 考古博の芝生広場には桑の木があり、葉が盛んに茂っています。 蚕が食べるのはヤマグワの葉らしいですが、この桑の木はマグワです、たぶん。 人には葉は食べられませんが、実が食べられるのはもう少し先みたいですね。 雨もそろそろあがりそう。新緑の考古博もお楽しみ下さい! 特別展講演会のご案内 5月24日(土)13:30~15:00(入場券配布12:50予定) そこのけそこのけ駅馬(はゆま)が通る」 馬場 基(奈良文化財研究所) 風土記1300年記念特別展・阪神・淡路大震災20年展 「古代官道 山陽道と駅家(うまや)ー律令国家を支えた道と駅ー」 6月22日(日)まで開催 詳しくは考古博ホームページをご覧ください http://www.hyogo-koukohaku.jp/

過去の記事一覧

もっと見る