権現山51号墳は、兵庫県たつの市の御津町と揖保川町の境にまたがる標高約140mの尾根上に位置します。
空から見た権現山51号墳
平成元年(1989)2月~3月、私(山本)が当時在学中の岡山大学考古学研究室が発掘調査を行いました。調査の結果、全長約43mの前方後方墳の竪穴式石室(後方部頂)から、三角縁神獣鏡が5面見つかりました。
発掘調査の状況
鏡の出土状況
2号鏡は直径約23cm、重さ約1.3kgの青銅製で、「張氏作三神五獣鏡」と呼んでいます。張さんが作った鏡で、3人の神様と5匹の神獣が表現されています。
2号鏡
また鏡には時計回りに漢字の銘文も表現されていますので、解読に挑戦しました。
神獣像の外側が銘文
銘文
張氏作鏡眞巧 仙人王(子)喬赤松子 師子辟邪世少有(上有仙人不知老)渇飲玉泉飢食棗 生【壽】如金石 天相保兮
※( )は不足、または加えることで、意味が通じると考えた文字。
※【 】は変更することで、意味が通じると考えた文字
読み下し
張氏(ちょうし)の作りたる鏡は真(まことに)巧(たくみ)なり。仙人は王子喬と赤松子なり。師子(獅子)は邪(じゃ)を除(のぞ)き世に有ること少なし。(上には仙人有りて、老いを知らず。)渇いては玉泉を飲み、飢えては棗(なつめ)を食らう。壽は金石の如く、天とともに相保ちや。
翻訳
張氏が作ったこの鏡は本当に素晴しい。この鏡の仙人は(中国の伝説上の)王子喬と赤松子である。この世に現れることは少ないが、(この鏡に刻まれた)獅子は邪悪を取り除く。天上では不老不死の仙人が玉泉(清らかな泉)を飲んで棗を食べているように、この鏡を持つ者の命は金石のように永久不変で、天上の仙人のように老いを知らない。
出展:権現山51号墳発掘調査団団長近藤義郎編『権現山51号墳』1991(平成3)年
(学習支援課 山本 誠)