(ほったん)
18日から開幕する冬季企画展「弥生の墓-玉津田中遺跡の方形周溝墓-」に関連してメインホールの展示品も新年(2日)から変更されているね。
普段の展示では、珍しい土器などの遺物が飾られているけれども、今回は何か様子が違うね?
この説明書きには「玉津田中遺跡の噴砂」と書いてあるけれど、「噴砂」ってな~に?
(学芸員)
これはね。実は地震ととても関係が深いモノなんだ。
ほったんは「液状化現象」っていう言葉を聞いたことがあるかな?
ボクは実際に見たことはないけれども、確か阪神・淡路大震災の時に地面が水に覆われてしまっているような写真を見たことがあるよ。
よく知っているね。30年前に起こった阪神・淡路大震災ではこの液状化現象のために、交通や人々の暮らしに大変な影響があったんだ。地震は揺れによる建物の倒壊や地割れといったものだけではなく、様々な悪さをしているんだよ。
砂が噴き出ると書いて「ふんさ」と読むんだけれど、「噴砂」ができる過程を説明しよう。
・地下のあまり深くないところに、ゆるく詰まった砂や石のかけらと一緒に地下水が混ざっている状態にある。
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・砂粒は、通常は、互いに支え合っているので安定している。
しかし、そこに激しい振動(地震)が加わると支えが外れてしまって、それぞれの砂粒が隙間を小さくして安定するように移動する。
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・隙間にあった地下水が圧迫されて水圧が上昇し、水圧の高まった水が砂粒を支えるようになり、地層全体が液体の性質を持つようになる(液状化)
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・さらに、水や砂が上位にある地層を引き裂きながら「噴砂」として噴き上がる。
この展示はまさにその「噴砂」の様子で、砂だけではなく大きな礫(石ころ)も含まれている。この噴砂は弥生時代の水田層を引き裂いて噴出してきているので、弥生時代以降に大きな揺れの地震があったことを示しているんだ。
玉津田中遺跡では、あの有名な豊臣秀吉の伏見城(指月伏見城)の天守を倒壊させた慶長伏見地震(けいちょうふしみじしん:1596年)が原因の噴砂がいくつも見つかっているよ。
そんなに難しいメカニズムが地面の下では起こっていたんだね。
それで、これがその噴砂の跡ってことか。
なるほど、地震の揺れも怖いけれど、この液状化のせいで建物が倒れてしまうことがあるんだね。
実際に、過去に起きた地震でアパートや団地などの大きな建物でも倒壊してしまった例もあるよ。
ただ、この液状化は固い地盤や地下水が深くにあるところではあまり見られず、海岸や埋め立て地や低地に多いといわれてる。だから住んでいるところが、昔は池だったとか、河川沿いの堤防近くの場合は普段から液状化が起こるかもしれないといった心構えも必要なんだ。
この展示をとおして、過去から繰り返し大きな地震が起きているということを、身近に感じることができたよ。
さっそく家に帰って、水や食べ物などの備蓄品をチェックするよ。