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講演会「米作りと酒造りの道のりをなぞる」

 兵庫県考古学研究最前線2021の第8弾は、「米作りと酒造りの道のりをなぞる-実験考古学でわかったこと-」と題して開催されました。


 今回の講師は、考古博物館の開設からずっと携わってきた高瀨事業部長です。赤米作りや竪穴住居復元を通して古代の暮らしを現代の視点で探求し、実験してきました。

 本日も多くのお客様にお越しいただきました。
 興味の先は米作り? それとも酒造り?

 -米作りをなぞる-

 髙瀨講師が兵庫県に採用された昭和60年(1985年)は、高速道路開発が盛んに行われたころで、それに伴う発掘調査の件数も右肩上がりとなり、とても忙しい時期だったようです。
 水田跡は広い面積を発掘しないと実態が把握できないので、大規模開発があった当時は水田の発掘が盛んに行われていたとのことです。そんな中、最初に担当した現場が淡路の雨流(うりゅう)遺跡(南あわじ市)の弥生~古墳時代の水田跡だったそうです。  

 最初に、淡路の志知川沖田南遺跡(南あわじ市)、雨流遺跡(南あわじ市)、播磨の美乃利遺跡(加古川市)、玉津田中遺跡(神戸市西区)、摂津の高松町遺跡(西宮市)などの水田の規模について解説していただきました。
 雨流遺跡の水田規模は平均で19㎡、志知川沖田南遺跡は平均約50㎡で、こちらの方が少し規模が大きくなっています。これは地形の影響が大きく関わっているようです。ちなみに高松町遺跡は、水田面積が8,500㎡で38区画あり、1枚当たり24㎡から2,100㎡とバラツキが大きいそうです。

【高松町遺跡の発掘現場】
 弥生~古墳時代の水田は、現代の水田とは形や大きさがだいぶ違っており、水田の形はある程度地形で決定されますが、なかには50㎝四方というあまりに小区画すぎる水田もあったりして、その用途は研究の余地ありだそうです。
 なお、発掘では田植えか直播きかはわからないことが多く、小区画の水田は直播きかも知れないとのこと。また、どのくらいの収穫があったのかも発掘調査ではわからないそうです。

 このあたりの興味から、考古博物館で、赤米や古代米の田植えを平成20年(2008年)から始めたとのことです。
 【考古博の田んぼ】
 なるべく昔のやり方を模索するため、3年間耕作放棄されていた水田を使用し、品種は対馬、種子島、総社の赤米と、参考にヒノヒカリを栽培し、肥料は施さず、移植法(田植え)で行い、収穫は根元から鎌で刈る(一部は石包丁で穂首を摘む)方法で行いました。

【赤米を選んだ理由】


 こうして、博物館の実験水田での収穫量と、明治初期の収穫量を比較し、さらに弥生時代の技術などを勘案して、古代の収穫量を大胆に推察したのが上記のような数字となったようです。

【集落全体の収穫量から集落の人口を推察】

 ここで、大中遺跡について考えてみると、大中遺跡では今のところ水田は見つかっていませんが、当時大中に住んでいた人数を考えると、食糧を米だけに求めるとすれば、水田の面積は20万㎡程度は必要だったのではないかと、まとめられました。

-酒造りをなぞる-

 米をつくるだけなら比較的簡単ですが、酒造りはかなり大変そうです。
 まず、酒類製造免許が必要で、しかも、酒、ビール、ウイスキーなど酒類ごとに免許が必要なんだそうです。特に日本酒は厳しく、酒造メーカーの協力を得ることになったとのこと。

 酒造りの基本知識として、でん粉をアルコールに変えること、『発酵』と『腐敗』の違いなどを説明してくださいました。驚いたのは、発酵と腐敗の違いで、「人間にとって有益なものが『発酵』で、有害なものが『腐敗』としているだけ」ということです。まぁ、もっともかなとは思いますが…。
 なお、発酵時に発する炭酸ガスがきついので、要注意だそうです。

【自作の酒粕】

 酒の元となる米ですが、実験では、赤い米(いわゆる赤米)を使ったから酒が赤くなるということはなかったようで、紫黒米を使うと赤くなったようです。赤米の酒は琥珀色だったそうです。

 江戸時代、大阪から江戸へ運ばれる下り酒(関西で造られた上等な酒)は、兵庫県の酒蔵(灘、伊丹など)のものが好んで飲まれ、1800年から1820年の間に下り酒の量が5倍になったこと、江戸積酒屋番付でも関西の酒が上位に多いこと、浮世絵などに描かれている酒樽などにも灘や伊丹の銘柄の印が多いことなどを紹介していただきました。また、下り酒を扱う酒問屋が多く集まっていた「新川」(東京都中央区)を訪ねた時の話などは面白かったです。

 なお、江戸時代は石高が武士の収入に直結していたので、米の流通量を調整し、米の価格を高値で安定させるために酒造りを行っていたとのことです。

 米作りも酒造りも奥が深いものですね。
 あっという間の一時間半でした。

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