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講演会「本をつくる仕事、こぼれ話」

 博物館で、本をつくる仕事?って思われたでしょうか。 
 報告書や展覧会図録、その他、結構あるんですよ。 
 

 今回の講師は、発掘調査などの仕事をしながら、本づくりにも長年関わってきた当館の菱田淳子学芸員です。
 2年前に予定されていた講演会ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、延期になっていましたが、今回やっと実現しました。 

 作成する「本」の一部を紹介します。
 発掘調査を行うと、出土品の整理や保存、そしてそれらを公開して活用するなどいろんな作業があります。それら発掘調査の「記録を保存」するためのものが『文化財発掘調査報告書』で、年度末に毎年刊行しています。文化財調査の成果物で、貴重な資料となるものです。兵庫県では現在517冊を発行しています。
 印刷部数は300部でしたが、阪神・淡路大震災以降に広く情報を発信するため、500部に増やした時期もあったそうですが、現在は300部です。
 発掘調査報告書は、堅牢にするため、分厚くなると製本は「糸かがり」という方法で行っていました。最近は無線綴じといういわゆる一般の書籍や雑誌のような方法で行ってますが、糸かがりはコストも高く、手間がかかり、最近は印刷業者でも対応できないところが増えたそうです。

 文化財発掘調査報告書と関連して刊行するのが『兵庫県遺跡地図』です。A4版が「発掘調査の手引き」で、埋蔵文化財についての基本的な考え方と取扱いの基準、関連法令、遺跡地名表などで構成されています。
 A3版の大きい方が「遺跡分布地図」で、埋蔵文化財包蔵地等の位置や範囲を示した地図編です。

 上の写真は、遺跡分布地図の印刷原稿(版下)作成に必要なトレース作業について、実際の見本を提示して説明しているところです。 
 1980年頃から版組はアナログ機器(活字や和文タイプライター)からデジタル機器(ワープロやコンピュータ)に移行し、とても便利になりましたが、印刷業界のパソコンはマッキントッシュ(Macintosh)が扱いやすく主流だったのに、官公庁はウインドウズ(Windows)だったので、データのよりとりがちょっとやりにくかったそうです。

 春と秋の特別展の『図録』の編集も行います。図録は展示資料の写真撮影に多く時間を使います。写真は、当館地下にある写真撮影専用の写真室で撮影します。街の写真スタジオに匹敵するくらいの設備を設けています。
 研究成果をまとめた『研究紀要』も毎年発刊しています。 

 本をつくるといっても、博物館内では原稿を仕上げて印刷業者に渡すまでの作業が主で、印刷や製本までして本に仕上げるわけではありませんが、製本の仕方(無線綴じや糸かがり)や、レイアウトの指定の仕方、原稿を校正するときに使う記号、使用する用紙の種類(アート紙、コート紙、マットコート紙、レザックなど)の違い、見かえしや面付などの言葉の意味の理解が必要です。また、遺物の整理などで「昔に」使っていた道具の紹介など、多岐にわたって、解説してくれました。

 最後に紙の本の未来、印刷を取り巻く世界の未来について・・・。
 報告書などはあらかじめ決められた部数しか発行せず、誰もがどこの図書館でも手にしたり、アクセスすることができないので「灰色文献」といわれているそうです。

 今回の講演の本旨とは少し離れるかもしれませんが、スマホで本が読める時代、パソコンで検索すればほぼ手に入る情報、本として手元に置かず、パソコンでデータとして置いておくことができる等々、手に取ってページをめくって読む紙の「本」というものの必要性について、少し考えさせられた、そんな講演でした。

 ところで、本を印刷するときは、大きな紙に表裏8ページ分もしくは16ページ分を印刷するので、基本的に本のページ数は8の倍数になっているそうです。ご存じでしたか。
 いろいろと参考になる講演会でした。

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