当館のテーマ展示「人」のコーナーには、ある一人の女性が開館当初からずっといらっしゃいます。 その方のお名前は「ひとみさん」。 本名はわかりませんが、私たちが勝手にそう呼んでいます。 ひとみさんは今から約1,700年前の古墳時代前期に、朝来市和田山町でご活躍されていました。もちろん今はお亡くなりになり、骨になってしまっています。 ひとみさんの展示 「ひとみさん」とお呼びするようになったきっかけは、今から約30年前、ひとみさんのお墓である向山2号墳(朝来市)を発掘していた時のことです。 兵庫県に就職が決まってまもない頃の私は、初々しく、はしゃぐように発掘をしていました。 調査が進むと、古墳は一辺10mほどの方形であることが明らかになり、その中央からは大きな墓穴がみつかりました。墓穴を掘り進むと丁寧に組んだ石の蓋が出てきました。 丁寧に組まれた蓋石 図と写真による記録をとり、慎重に蓋を外しながら中をのぞくと、、、、 中には人骨が残っていて、目と目が合い(目はないけどそんな気がした)、ドキッとしたことを今でも憶えています。 ひとみさんの埋葬の様子 ひとみさんのお墓はベンガラで真っ赤に塗られた竪穴式石室で、意図的に割られた中国製の内行花紋鏡が枕元に、2本のヤリガンナ(木を削るカンナの一種)が肩の辺りに置かれていました。 石室の外には2つの土器が供えられ、玉砂利が石室周辺と棺内に敷かれていました。 手厚く葬られていて、地域の人々から信任され、愛されていたことがわかります。 赤く塗られた石室と 供えられた土器 意図的に割られた 中国製の鏡 (小型の内行花紋鏡) 発掘調査で人骨が出土すると、形質人類学がご専門の大学教授に現場を見ていただき、年齢、性別、身長、その他の身体的特徴を教えていただいています。 ひとみさんの調査の時も先生に連絡をとり、現場まで見に来ていただきました。 すると、 「この方はきゃしゃで、美人さんですね。例えるなら、黒木瞳さんのような方です。」 とのお言葉。 この時から、私たちはこの方のことを「ひとみさん」と呼ぶようになりました。 先生のお話によると、ひとみさんは ①40~60歳の熟年女性 ②身長は約150センチ ③虫歯があり、生前に上の左右
弥生の村、史跡大中遺跡に隣接したフィールドミュージアムです。