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#自宅でも考古博 27 「古代のインデックス」

 考古学では、出土遺物のうち、木に文字を書いたものを木簡と呼んでいます。紙やデジタルデータに囲まれている私たちにはピンとこないところがあるのですが、古代の人たちにとって、木簡は、材料が入手しやすい、表面を削ることで再利用ができるという利点があり、行政文書・荷札等、様々な用途に使われていました。また、文書用の木簡が不要になると、加工して別の用途に再利用することもありました。

 用途・形態とも多岐にわたる木簡ですが、この焼き鳥の串みたいなものは何だと思いますか?古代但馬国気多郡に位置する深田遺跡(豊岡市)から出土したもので、平たい頭部に細長い軸が付いており、頭部の両面には文字が記されています。


深田遺跡の題籖軸


 これは題籖軸(だいせんじく)という木簡。使い方は、軸の部分に紙の文書を巻き付けて保管するためのものです。紙の文書は書かれた面を内側にして巻き付けられますから、そのままでは中身が判りません。文書を開かなくてもすむように、頭部に文書の内容をメモするのです。今の付箋やインデックスと同じで、書類整理の基本は千数百年前からあまり変わっていないようです。

 では、これらの軸に巻いてあったものはどのような文書だったのでしょう。もう一度、頭部をよく見てみましょう。若干の違いがあるのですが、表に文書の内容、裏面に年号を書いています。
 一番右側のものを例にとると、「造寺米残」、「弘仁三年」(812年)とあります。造寺米とは寺の造営に支出したコメの事で、弘仁三年の残量を記した文書ということになります。寺の名前は書いてありませんが、おそらく但馬国分寺か国分尼寺の造営に使われたものでしょう。
 他の題籖軸にも「官稲」・「田租」・「租未進」、「大同五年」(810年)・「弘仁四年」(813年)と見え、どうも9世紀初め(平安時代)の税金に関わる文書類を整理したもののようです。

 深田遺跡からはこれ以外にも土地や稲に関わる木簡類や墨書土器が出土し、その中には他郡の名称を記すものがあることから、但馬国全体の文書行政をつかさどる役所-但馬国府-の有力な比定地となっています。
 ※なお、今回紹介した題籖軸は常設展では展示しておりません。
(埋蔵文化財課  鐵  英 記)

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