開催中の春季特別展「弥生時代って知ってる?」に関連する講演会が開催されました。
特別展で展示している望塚(ぼんづか)銅鐸の復元に関するお話です。
昨年、兵庫県立相生産業高等学校機械科の3年生が、青銅器製作の授業で加古川市出土の望塚銅鐸の復元に取り組みました。
講師の相生産業高等学校の竹下先生(右)と、兵庫県まちづくり技術センター埋蔵文化財調査部の篠宮課長(左)です。
講演の第1部、鋳造実験。相生産業高校が銅鐸を作成した方法で、竹下先生が実際に銅鐸づくりを再現しました。
砂を炭酸ガスで固めた鋳型に黒鉛を塗り、重ね合わせた時に剥がれないよう接着剤を鋳型の周囲に塗る作業です。三田市の平方遺跡出土の小銅鐸を見本にして鋳型を作りました。
2枚の鋳型を重ね合わせます。ずれないように、器具を使ってしっかり固定します。
1,280度に熱せられた青銅(銅90%、錫3%、鉛7%)を鋳型に注入します。1,200度がちょうどよいらしく、80度高いだけでも微妙だそうです。
密を避けるため、見学人数を30人ずつに分けたので、後半に見学する方は講堂で篠宮課長の解説付きで生中継をご覧いただいています。
残念ながら失敗でした。注入した銅が、鋳型の中の2㎜の隙間にいきわたらなかったのが原因のようです
上手くいけば、こんな風にできていたのですが…。後半に挑戦した銅鐸に期待しましょう。
その後は、淡路の「慶野銅鐸」や国宝「桜ヶ丘5号銅鐸(神戸市立博物館蔵)」のレプリカを作成し、地元の学校に寄贈したり、当館の特別展「青銅の鐸と武器」でレプリカを展示したりと活動が大きく進展し、平成29年度にはBS番組「ガリレオX」で全国に紹介されるなど、昨年の本館と共同での望塚銅鐸の復元までの道のりをビデオ上映も交えて解説していただきました。
竹下先生(左)に篠宮課長(右)が銅鐸復元について質問する形で進められました。
金属の配分比率、特に錫の配分率の決め方や、銅の素材をどこから調達したのかについて詳しく聴きました。
また、今回鋳型は工業用の砂を炭酸ガスで固めて作りましたが、初期の銅鐸のように石で鋳型を作れないかという質問について、竹下先生は、「さすがにそれは……」と、困っていました。いずれは望塚銅鐸が作られたと想定される、土を使っての鋳型作りには挑戦してみたいと締めくくられました。
銅鐸づくりの実演を見たので、今の知恵と技術と道具をもってしてもなかなか精密につくることができないものを、2000年前の人たちがどのようにして作ったのか、新たな興味が湧きました。「弥生人ってすごい!」と実感しました。