10月11日(土)に発掘調査成果についての現地説明会が加東市下滝野であります。
そこで今回は発掘現場で使う道具をいくつか紹介します。
こちらは昨年度に発掘調査を行った加古川市平荘町にある「山角廃寺」の調査現場です。
奥の方にトラック、ショベルカーなどの重機やベルトコンベアーも見えますが、今回ご紹介するのは最も身近な道具です。
まずは、地面を掘り進めるための道具類。
基本的に活躍するのは、土を掘り起こして遺構や遺物までたどりつくために使用するシャベル。
ちなみにこの呼び名は関西と関東では異なるようです。関西では大きいサイズのものをシャベル、小さいものをスコップと呼んでいますが、関東では正反対で大きいものをスコップと言います。なんかしっくりきませんね。
ただ、正式な呼び名があるようで、それはJIS規格に定められていて、写真(左端)にあるように掘るときに足がかけられるものをシャベル、この直線部分がまるくなっているものをスコップとしています。
それから園芸用などとして片手で使用するスコップ、正式には「移植ごて」。この名称は確か小学生の時に理科の授業で習ったような覚えがあります。
この移植ごては繊細な作業の時に使うものですから、調査員・学芸員さんによっては自分用のお気に入りの❝マイ移植ごて❞を持っている人も多いようです。
なお、この辺りでは、大きいスコップを「大スコ」、小さいものを「小スコ」なんて呼んだりしています。
次は一般の人にはなじみの薄い「じょれん」。
先ほどの現場写真にもブルーシートの上に置いてありました。(分かりにくくてスミマセン)
じょれんは、漢字にすると「鋤廉」と書きます。文字通り鋤(すき)の一種のようで、現場では土をすくう時、土の表面を削る時、遺構を探すときにがっちりした厚みのあるものを使います。
それから、作業員さんたちの足元にあった土を入れるプラスチック製の大きなちり取りのような形をしているオレンジ色の物体。
これは「み」というらしいです。漢字にすると「箕」一文字です。
この「箕」という漢字は音読みでは「き」、訓読みだと「み」または「ちりとり」と読むそうです。そのまんまでした。
こちらは「ネコ」と言います。そういえば猫車と呼んでいるのを聞いたことがあります。
なぜ「ネコ」なのか調べてみましたが、いろいろな説があってどれが正しいのかわかりませんでしたので、[工事現場の細い足場の上を、猫が歩くように一輪車で運搬するため「ネコ」になった]説を個人的には押したいと思います。
大学での調査の時には、主に1年生がやらされる作業になっていて、「ネコ押し」と呼んでいます。
最後に現場に張られているこの赤い線は運命の糸ではなく「水糸(みずいと)」です。建物の基礎工事の時にも見かけますが、目立つように主に蛍光色が使われています。引っ張る力に強く耐久性もあるので現場では重宝するとのことです。図を描くための割り付けに使用します。
この特徴を活用して、当館渡り廊下に展示していた壁新聞はこの水糸(色は蛍光色のグリーン)を使って、小学生の作成した入賞作品を吊り下げていました。
以上、今回は非常に初歩的かつ主要な道具を紹介しました。実際はいろいろな重機やレベル・光波測距儀など、使う道具もどんどん進化していっています。
デジカメやドローンも大活躍しています。
では、ここから、それらの地道な発掘調査の成果である「現地説明会」のご案内です。
日 時 : 令和7年10月11日(土) 10:30~12:00
場 所 : 下滝野・奥瀬遺跡発掘調査現場(滝野中学校隣接地)
※JR加古川線滝野駅から南西に徒歩約15分(約1㎞)です。
※駐車場あり。(台数に限りあり。公共交通機関等をご利用ください)
※雨天中止です。
概 要 : 縄文時代と平安時代から室町時代にかけての集落跡。
炭焼成遺構(炭窯)や漆付着土器などの生産関連遺構・遺物も多数見つかっており、古代~中世の滝野地域における集落の様相を明らかにする上で、重要な成果となりました。
調査区全景(南から)中世の井戸(北東から)